ミニレポート 訪問日:2005.9.8

伊那谷を行く

〜広域農道を走って駒ヶ根でソースカツ丼を食す〜

伊那谷の概要

伊那谷は中央アルプスと南アルプスに挟まれた幅5〜10キロ、長さ80キロに及ぶ広大な谷である。伊那谷で特徴的なのは、平地部分が非常に広いということである。天竜川を底辺として、なだらかな丘陵地帯が河岸段丘のように形成され、次第に高度を上げて木曽山脈の裾野へと繋がっている。隣の木曽谷が「木曽路は全て山の中であるby藤村」と言われる程険しいV字谷なのとは対照的な地形と言えよう。

昭和50年代、首都圏と中京圏に直結する中央自動車道が開通したことで、伊那谷の商工業は飛躍的な発展を遂げた。元々広い土地があり、長野県としては降雪も少なめで、工業用水も豊富だったことが、工場誘致などに有利に働いた。

当然、R153に沿って延々と街が続き、朝晩は通勤の車で渋滞する。さらに大型トラックがバンバン通る。

伊那谷というところは、ツーリングルートとしては谷筋に沿った道しかなく、走って楽しそうなダイナミックな峠越えの道は少ない。いくら風光明媚なところとはいえ、ロングツーリングにおいて伊那谷の通過は避けたいというのが、今までの僕の気持ちだった。

ところが、近年広域農道の整備が進み、ほぼ南北を農道だけで縦断出来るようになったのだ。農道でこれだけの距離を移動できる地域も珍しいだろう。しかも、農道が国道並みに地域の主要交通網の一端を担っているらしい。

それって、全然「農道」じゃないじゃん・・。伊那谷における道路交通の第三の柱「広域農道 伊那フルーツライン」とは、はたしていかなるものか、興味津々で訪問してみることにした。

・・・うっ、前置き長っw、ミニレポなのに。

蓼科〜茅野〜杖突峠

台風が去った翌朝6時。

夏の間は霞みの向こうにあったアルプスが、蓼科からもクッキリと見えていた。この天気なら、伊那谷からも木曽駒が良く見えることだろう。

ではVTR250にて出発!

一旦茅野市に下りて、R152杖突峠へ登る。

R152はフラットな諏訪盆地から、突然!奇妙なほど急角度で立ち上がっていく。この唐突な崖こそが、フォッサマグナを形成する「糸魚川・静岡構造線」なのだ。

さらに、ここには、やはり日本を二分する大断層「中央構造線」が通っている。

「糸魚川・静岡構造線」と「中央構造線」という二つの大断層がクロスする場所、それが杖突峠なのである。

幸運な事に?、そんな所を走る道が険しくないはずも無く、道はコーナーを重ねつつ急角度で断層の縁を駆け上がり・・・
峠付近では広大なパノラマが広がった。

杖突峠

峠付近の展望台に寄るが、残念ながら早朝で開いていなかった。ということで、下の写真二コマは前週の昼間に撮影したものです。
実は、杖突峠の展望台は喫茶店のベランダにある為、喫茶店の営業時間内しか利用することが出来ないのだ。

ベランダに出るには店内を通り抜けなければならないので、店員さんの視線が気になるが・・・。

もっとも展望台自体は茅野市が買い取ったらしいので、税金を納めている身としては遠慮することはないはず。視線を華麗にスルーしてベランダへGO!

 

 


喫茶店からの眺め、日本一クラスだろう


おおっ!スバラシイ!人家がゴ○のようっ・・・?

市街地はまるで実物大のジオラマを見ているかよう。屏風のように立ちはだかる八ヶ岳と、広大な裾野が生み出す傾斜した大地が、素晴らしいパノラマ感を醸し出している。風に吹かれながら、しばし展望を楽しむ。

桜の都、高遠の夏は・・・。

さて、再びバイクに乗って杖突峠を越えると、峠の先には意外な程おだやかな道が続いていた。つまり断層の上はフラットなのだった。道沿いには集落も多く、景色も単調で、それほど面白い道と言う印象はない。仕事の様に淡々と走る。
中央アルプスを展望したいと思って、高遠城址を訪れてみた。

20年程昔の桜の季節に高遠を訪れた時は、あまりにきれいで感動した記憶があるが・・・
今では桜の季節は渋滞十数キロが当たり前で、近づくことさえままならない。多分、二度と訪れることはないだろう。

緑の季節はというと・・・桜の季節の喧騒とはうって変わって、人っ子一人居ませんでした。空掘りに緑だけが溢れていて、いかにも古城な雰囲気。

 

木曽駒を伺うが、枝に阻まれて視界は利かず。展望が無ければ長居するほど面白いところでもない。数分散策して、ふたたびバイクに跨る。

 

伊那谷から木曽駒を眺める
さて、高遠から伊那谷へ降りていくと、木曽駒が良く見えてきた。どうやら、高台よりも田園の中のほうが展望がいいようだ。わざわざ高遠城址に登ることもなかったか・・・。


夏休みの、ある一日。

9月に入って、稲穂が黄金色に輝き始めている。思わずあぜ道にVTRを乗り入れ、木曽駒を見上げる。空も、山も、キラキラ光る稲穂も、目に入る色すべてが鮮やか。

 

 

県道18号線・・・伊那谷の東側
伊那からは伊那谷の東側を県道18号線で南下することにした。まずは標高853メートルの火打峠を越える。道は舗装2車線で、適度なワインディングとなっているのだが、標高から想像したよりあっけない。

下りはヘアピンが幾つかあるが、やはり、あっけなく終わってしまった。

よく考えると伊那谷の標高は600メートル前後なので、853メートルの峠といっても、大した標高差は無いのであった。

やっぱり、伊那路にダイナミックなアップダウンのワインディングは望めないようだ。しかし、たまにはこんな田舎道を走るのも悪くない・・・、

というか、結構楽しいぞ。ローカルすぎて。

道は天竜川の縁をなぞって走る。交通量も少なく、のどかな風景が続く。

 

ある時は川べりを走り・・・
ある時は田園地帯を縫って走る。木曽駒を望む風景が美しい。

分岐のところにもちゃんと標識が出ているので、迷うことはない。さすが主要地方道と思ったら・・・
ガーン、いきなりこんな狭い道が出現。道理で交通量が少ないはずだ。

道端にバイクを停めて、川べりを覗き込む。川面の向こうには木曽駒がそびえていた。うーむー、のどかだ。癒される〜。
10分程狭すぎる道を我慢して走ると、道はふたたび広がった。

のんびりと、景色の移り変わりを見ながら走る。いいねぇー、のどかで。

 

伊那谷の南東部にある広域農道を探る
今回のツーリングの目的の一つは、マップルを眺めていて発見した謎?の広域農道の調査である。マップル上では、伊那谷の東側の中腹を沢山のカーブを重ねて通っている。

農道の入口というのは、概して看板も少なく、目立たない事が多い。入口を求めてしばしさ迷い、幾度かの試行錯誤の上に見つけたのが、この「松茸観光」の看板である。

別に松茸狩りに来た訳ではないのだが、とりあえず左折。

3分程登ると、待望の標識が出てきた。広域農道とある。
右折して広域農道へ入ってみる。もっと立派な道を期待していたのだが、割りと地味だった。チョイがっかりか?
地形的にはアップダウンの険しい道で、交通量も数分に一台程度と少ないのだが、民家が道端に結構あって、意外に生活感のある道だった。

少なくともかっ飛ばす道ではない。どちらかというと、野菜カゴを積んだカブでトコトコ走るのが似合いそうな感じ。

 

LTCで普段取上げるようなダイナミックな道ではないのだが、のんびり走っていると癒されるというか・・・、先ほどの県道18号線と同じく、癒し系の道かな?。これはこれで、いい感じ。たまにはこんな道をトコトコ走るのも悪くない。
ずーっと伊那谷と木曽駒を眺めながら走る。夜景なんかもきれいそう。

天竜峡に行ってみたが・・・

さて伊那谷の尽きるところが、天竜峡である。

せっかく近くまで来たので、天竜峡を訪れてみた。川下りで有名な場所だが、一人で船にのっても仕方ないので、釣り橋を渡ってみよう。ちなみに、バイクは誰も居ない広い有料駐車場に停めた。もちろん誰も居なかったので無料だったが。行楽シーズンの休日は有料になると思われる。

 

景色の方は・・・、日本中どこにでもありそうな、ありふれた渓谷だった。やはり船に乗って川下りの風情を楽しむところなのだろう。

ここは飯田線の駅からすぐだし、電車で訪れて、旅館にでも泊ってマッタリ過すのが正しいのかも。

広域農道フルーツライン

時刻は11時過ぎ。そろそろ引き返さなければいけない。

伊那から辰野までは、長大な広域農道を辿ることにした。

看板を見ると、正式名称は「南信州フルーツライン、伊那南部広域農道」のようだ。

道は走りやすくて、伊那谷やアルプスを望む風景も素晴らしい。交通量はそこそこあって物流のトラックが多いのが少々難点か。

しばらく北上すると、駒ケ岳が見えてきた。「農道」と言えど、道端にセブンイレブンが有ったりすることからも、道の性格が判る。

途中、ダー岩井さんのHPで良く紹介されている千人塚公園を訪問してみた。なるほど、アルプスが間近に見えるし、静かで、休憩するのにいい場所だ。しばし山を見ながらのんびり過す。

木曽駒の麓、駒ヶ根にて
木曽駒の麓、駒ヶ根にやってきた。

千畳敷カールが遥か彼方に見える。ロープウェイで2611メートルまで登る事が出来る有名観光地だ。

以前6月に訪問した時は、まだ雪に閉ざされていた上に、ガスっていて視界が利かなかった。登るなら、麓から上が見える日にすべきだろう。

残念ながら、ここから先は一般車通行止め。バスに乗換えて行かねばならない。

千畳敷まで行くとなると、駐車料金+バス料金往復+ロープウェイ料金往復で、かなり高くなってしまうのが難点だが・・・。今回は時間が無いのでUターン。

登山記はこちら

せっかくなので、こまくさの湯に入っていくことにした。入浴料は500円。駐車場は広いが、平日にも係わらず結構混んでいた。

駒ヶ根高原の中心部から木曽駒に向かっていく県道沿いなので、場所は判りやすい。

泉質は普通だが、ガラス張りの内湯や外の露天からは駒ヶ岳が良く見えて、気持ちいい!
ソースカツ丼を食べるのだ!
駒ヶ根といえばソースカツ丼が有名である。
中でも有名なのが、喫茶店ガロのソースカツどんである。

休日だと混んでいるのだが、幸い平日だったので入ってみることにした。場所は先ほど入った「こまくさの湯」の3軒ほど隣だった。

15分程待って出てきたカツ丼は・・・

おおっ、で、デカイ!すごいボリュームです。右側の味噌汁が普通サイズですから・・・。

では、いただきます!

・・・うわっ、美味しい!見た目を遥かに上回る美味しさ。とんかつのボリュームも、衣で形成されているのではなく、中身の肉が分厚くて大きいのですよこれが、びっくりです。

お値段の方は1160円。脱サラ以来、こんな高い外食をしたのは初めてです。どひゃー、一日の食費200円位、肉は週2回位の私としては、マジで箸が振るえる(笑)。いやCPからすると安いけど。

一度に食べるのは勿体無さ過ぎるので、パックをもらって(みんな食べきれないのでパック詰して持ち帰っている)、半分は持ち帰ることにしました。ふっふっふ、これで今晩のおかずはOKだぜ・・・って、俺セコい(笑)。

いつかお腹いっぱい食べてみたいです。・・・って、ガロに来た意味ないじゃん(苦笑)。貧乏って面白すぎ。いやでも美味しかったからオーケィ!。

再び、広域農道で
再び、広域農道で伊那谷を北上していく。山並みは尽きることなく延々と続いていて、空はますます青く澄み渡り、稲穂は黄色味を帯びて輝きをましていた。そんな景色の中で、バイクを走らせるオレ。なんて幸せなんだろう。

先ほど、貧乏を茶化すような記述をしたけど、お金が無くても、サラリーマン時代よりずっと豊かな生活を送っているのだと、バイクを走らせながら思うロモであった。

 

さて、次回以降の伊那レポは、木曽駒登山、長野の峠道シリーズ「太平峠」「清内路峠」、特集!開通権兵衛トンネル、etcを企画しています。お楽しみに。

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