今月の風景

2003年 9月

〜 神々が遊ぶ雲上の大地 〜

月山〜阿弥陀が原〜

 

木道を空に向かって歩いていきます。素晴らしい風景が見られそうな予感がします。少し歩くと視界が開けて来ました。

広大な湿原にニッコウキスゲが咲き乱れ、池とうが青空を写しています。振り返ると鳥海山の白い峰が目線の高さにそびえています。
坂を上りきると、緑の大地の先には白く輝く雲海が果てしなく広がっていました。

雲海に浮かぶ広大な緑の大地。予感を遙かに上回る雄大さに呆然と立ちつくす私。それにしても・・・・・。月山って有名な山だけど、これほど素晴らしい湿原が広がっているとは・・・・・。

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山形道の古関PAより笹谷峠方面を望む
宮城と山形を結ぶ険しい峠。雨、気温17度。とにかく寒い

8月16日早朝。川崎から夜通し走り続け山形道に達する。記録的な冷夏で夏だというのにとにかく寒い。綿シャツに春物ジャケットに雨カッパ。それでも寒くてSAで朝刊を買い求め、天気予報だけ読んで腹に巻く。

峠を越えると青空が広がっていた。寒河江(さがえ)ICで降りて国道112号線へ。国道112号線は月山と朝日連邦の間の険しい峠を抜ける整備されたハイウエイ。大規模なトンネルが多く、ひなびた峠道とは別物だが、道を取り巻くブナの原生林の眺めは圧巻。

山を越えて日本海側まで来ると、快晴であった。緑色に輝く広大な水田に米どころ庄内平野の豊かさを実感する。青空に鳥海山が浮かんでいる。思わずバイクを止めてシャッターを切る。

鳥海山と並ぶ巨大な山塊が月山である。庄内平野からはこの2つの山塊が並んで見える訳で、大した物である。今回の旅の目的は月山である。

羽黒から月山に向かって登っていく。道幅はとても狭く、見通しも悪い。乗用車とバイクの擦れ違いでさえ少し気を遣う程だ。だが、路線バスや観光バスも通り、道の使い方にかなーり無理がある。少なくとも3ナンバーの車では入っていきたくない感じ。

一方、道の両脇はブナの巨木が林立する原生林。自然の宝庫である。キャパの少なさと雄大な景観による観光客の増加は、将来的なマイカー規制導入ということになるような気がする。

原生林を抜けると、圧倒的な展望が待っていた。庄内平野の田園、青空に浮かぶ鳥海山、どこまでも続く日本海。これ以上無いという程の展望に思えたのが、これはまだ序の口だったのだ。

8合目駐車場の片隅にバイクを止めて歩き出す。ちなみに駐車場は100台位停められる中規模な物だが、登山者の数を考えると圧倒的に不足している。車で来るなら早朝でないと停められないだろう。

傾斜した湿原の中を歩いていく。標高1500メートルクラスで森林が育っていないのは珍しい。湿原化しているのは、この大地が火山の噴火によって作られ、地層的に水を通しにくくなっているのと、噴火物による酸性土壌のせいだろうか?などと想像しながら歩く。

(ちなみに、家に帰って調べたがインターネット上では詳しい情報は見つけられなかった。月山は積雪量が多く場所によっては30メートルに達するとか!?で森林限界が下がると地元自治体のHPにあったが)

駐車場から徒歩10分ほどで阿弥陀が原に到着。月山八合目に広がる穏やかに傾斜した広大な湿原だ。ありがたいことに四方八方に木道が張り巡らされていて、この天空の大地を楽しく歩き回ることが出来るのだ。

草原の向こう、大地が落ち込む先には雲海が広がっていた。

阿弥陀が原の北の外れまで来ると、鳥海山が見えた。

もう阿弥陀が原を散策しただけで十分満足って感じなのだが、せっかくここまで来たのだからと月山に登り始める。時刻は11時過ぎ。登山開始にはちょっと遅い時間だが、ガイドブックには山頂までは二時間半程とある。もう八合目まで来ているし標高差も400メートル位だ、楽勝だ。と思っていたのだが。

何より空気感が違う。いかにも高山に来たという感じなのだ。


阿弥陀が原を見下ろす。雲の向こうには鳥海山が見える

阿弥陀が原を見下ろす。大地が落ち込んだ先には深い谷があり、その先には深い森林に覆われた山々が続く。

登山道は岩がゴロゴロしてはいるのだが、信仰の山だけによく整備され、歩きやすい。しかし登坂一時間ほどで膝に痛みが走るようになってきた。脚が疲れた位のものならいいのだが、神経直撃でズキンズキンと来るかなり強度の痛みである。単独の山行きで一番避けたいのが動けなくなること。登ったはいいが降りれなくなったら最悪である。午後1時を過ぎて道程半分まで来たところで引き返すことにした。

引き返し始めたところで脚がつったようになり歩行困難に。30分ほど休憩し山小屋で金剛杖を二本購入。長さが背丈程もある丈夫な木の杖なのだが、これがとても役にたった。長いので足下50センチ下の足場に杖をついてゆっくり身体を降ろすことが出来るのだ。しかも4本脚で歩いているような物で、身体がぶれにくいから、膝の負担も少ない。なんとか歩いて下山出来そうだ。そもそも登る時に杖があったら膝が痛むこともなかったように思われる。今度から山に登るときはダブルステッキにして、しかもステッキは出来るだけ長めの物ににしようと思う。登頂は次回に持ち越しだ。

雲海と天空の大地の境を見た。

阿弥陀が原まで戻ってきて木道を降りていく。夕景の朝日連峰、庄内平野、鳥海山、そして日本海を一望する。美しい!

登頂こそかなわなかったが、素晴らしい散策ができて、とても満足!

その日の宿泊は羽黒国民休暇村のキャンプ場にした。月山から下りてきて突き当たりを右に100メートル程行ったところに有る。羽黒山スキー場ゲレンデのベース部分だ。料金は千数百円と高めで、フリーサイトが狭めななのがちょっとあれだが、清潔で設備が整っていて安心。

テントを張ったら温泉を探しに行く。鶴岡方面に15分ほど走ったところで、夜の田んぼに忽然と輝く大きな体育館の様な建物が有り、訪ねてみたら「やまぶし温泉ゆぽか」という公共の温泉であった。すごい混雑だったが、泉質は海水を煮たような塩っぽい温泉で面白かった。そこそこ満足し、近くのファミマで弁当を買って帰る。周囲に何もないような農村にもコンビニがあって恐れ入る。便利だ。

夜のキャンプ場は静かな山の中、とはいかず、午後1時を回っても宴会と、近く(休暇村施設の駐車場?)をスピンターンなどして走る走り屋の車のスキール音で騒々しかった。羽黒山といえば信仰の山なのに・・・。休暇村と警察は協力して族を取り締まるべきで、そうでないと観光客が減っちゃうよ、とあきれる。

翌朝6時に起きて帰路に付く。羽黒山には国宝の五重塔など見所が多いのだが、その辺りは次回来たときに期待しよう。

山形道に入り笹谷峠を越える頃には強い雨となり、山形道、東北道、常磐道、首都高と断続的な雨の中を走る。都心に戻って来たのは6時頃。五反田の勤務先に寄り道して明日の仕事の準備。

夏休みツーリングが東北一泊二日仕事付きかぁ・・・うーん、リフレッシュが足りない。もっと長い旅をしなければ・・・・・。

(↑この翌年に脱サラすることになるのだった(苦笑))

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