ミニレポート 走行2007.1上旬 掲載2007.1.16

紀伊半島 曽根飛鳥神社の森

〜あまり知られていない、浜を守る鎮守の森〜

境内に足を踏み入れると、クスとスギの巨木が迎えてくれた。

尾鷲市 曽根飛鳥神社 楠と杉の巨木
見つけたのは紀伊半島の海岸線を巡る旅の途中だった。

海沿いの漁港を覆うように茂る小さな森だった。そう、ヘルメットのバイザー越しに見えたのは、ほんの小さな森だった。

一端行き過ぎたのだが、何故か惹かれるものがあって、Uターンして戻ってきた。ヒト気はなく、特に名所となっている様子も無い。どうせ大したことないだろうと思いつつ、道端にバイクを停め、森に近づいてみる。

 

神社の森のようだ。漁港に隣接していることから、浜を守る森ということだろう。

こっ、これは・・・!境内に足を踏み入れた瞬間、スギとクスの大きさに度肝を抜かれた。凄い重厚感だ。

 

ほんの数十メートル、数十秒歩くだけで、森の奥にある社殿にだどりついてしまった。それだけ小さな神社なのだ。社殿は素朴で小さな建物だった。周囲の木が巨大なだけに、よけい小さくみえる。有名神社の、最初に神殿ありきの、荘厳華麗な建物とは対照的だ。

おそらく、「森」自体が浜・そして漁村を守る神様として大切にされてきたのだろう。アニミズム的な素朴な信仰が伺えて、それが千年以上の時を経て大切にされていることが伺えて、僕は嬉しくなった。

飾り気の無い山門を、覆うように立つクス。
境内には圧倒的な巨木が林立していた。

ほんの2分ほどで端から端まで歩いていける程の小さな森なのだが、樹齢千年クラスと思われる巨木が何本も揃っている。

貴重なものだと思うと同時に、保護の状態が心配になった。いくら集落の人たちが大切にしているとはいえ、これだけのものが、公的に全く保護されずにいるとしたら、心配だ。この森は国道311号線の改良区間と未改良区間の境にあるし。

尾鷲市の看板を見つけた。樹そうは県の天然記念物に指定されているそうだ。ほっとすると同時に、国の天然記念物に指定してもいいくらいだと思った。というのは、魚つき林としての鎮守の森・・・そういう森は海岸沿いをツーリングしているとよく見かけるものだが・・・として、これだけ長い年月を経た巨木を有する森は貴重な存在だと思うからだ。まあ、地元の人を除けば、巨木巡りの人しか訪れないマイナーな存在ではあるけれど。
樹齢千年、幹周り11.5メートル、樹高30メートルのクスの木。
ツーリング中、田園地帯を走っていると、鎮守の森をよく見かける。山を背にしてこんもりと森が生い茂り、入り口には社が建つ。サツキとメイが迷い込んだような、薄暗い、トトロが居るような森である。自然への素朴な信仰が伺える風景だ。

海岸沿いを走っていると、浜に飛び出たような半島や島にこんもりと森が生い茂り、社が祭られていることがある。こういった森を魚つき林という。古来、海沿いの森は魚を寄せ付けるとして保護されてきた。海岸にある鎮守の森は、浜を守る森なのである。飛鳥神社の森も、浜を守る森として、千年以上の長きに渡って大切にされてきたのだろう。

今回紹介した飛鳥神社の森は、特に観光地ではないし万人にお勧めする訳ではない。今回、あえて地図を掲載しなかったのも、観光地ではないからだ。ただ、全国各地をツーリングしていると、いろいろな物に出会う事が出来る。鎮守の森もその一つだ。宅地に切り取られてやっと残っているものも多いけど・・・。皆さんも気にしてみてはいかがだろうか?思わぬ巨木に、思いがけない風景に出会えるかもしれないよ。

↑おおっ、なんか俺芸風違うね。

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